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見かけ上「害虫」と思われるクモ類 |
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大型のクモは、その姿から害虫と誤認されている。本来は、それほど毒性はないのだが、害虫というイメージは、なかなか消えない。
もう20年も前、エクアドル産の輸入バナナの荷から大型のタランチュラが発見され、大騒ぎとなった。牙は鋭いが、人を攻撃することはない。そのタランチュラは、八木沼健夫博士(クモ学者)のもとに送られ、2〜3年、博士の部屋で可愛がられ、のちに博士の秘蔵の標本として残っている。 |
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有毒種 |
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世界中に約30種のゴケグモ類がいるが、2000年「クロゴケグモ」、1995年「セアカゴケグモ」と「ハイイロゴケグモ」、そして1955年、咬症事件を起こしたものの、その存在が疑問視された「幻のゴケグモ」、この4種がすでに日本に上陸している。
[1]クロゴケグモ
2000年10月20日、米国岩国基地で日本に生息していない有毒種「クロゴケグモ」が、約60匹発見された旨の説明があった。すぐに山口県環境生活部生活衛生課が動き始め、クロゴケグモに関する資料の提供とアドバイスを求められた。同時に山口県在住の増原啓一氏(クモ学者)に、岩国基地周辺でサンプリングしたクモの同定が求められたが、その時点で周辺地域からクロゴケグモは発見されなかった。10月27日、米軍岩国基地からの発表で、新たに約200匹のクロゴケグモが発見され、これを駆除した旨の報告があった。基地内では60人体制で、クロゴケグモの完全駆除を目指したという。山口県と岩国市は、4万枚のパンフレットを配布し、地域住民へ注意を呼びかけた。10月28日になって、最初の発見から約300匹のクロゴケグモを駆除したという報告が山口県になされた。11月1日、基地内では沖縄などから専門官も動員され、卵も確認、本格的な駆除をおこなったという。なお、「クロゴケグモは、これまでも時々、基地内で見られた」そうだが、「これほどの多量発見は初めて」とのこと。その危険性を考え、秘密にすることなく基地内の情報を報道したものと思われる。実に米軍としては珍しいことである。
これまでのサンプリングの結果、基地外でクロゴケグモが発見されたという報告はない。
本来北米産のクロゴケグモが日本に侵入したルートは、航空機の荷に紛れたものという説が正しいと思う。
クロゴケグモ(北米産)
[2]セアカゴケグモ
1995年9月11日、大阪府で初めて発見されたセアカゴケグモ。完全に駆除することは出来なかったらしく、今でもあちこちで発見されている。
沖縄に広く定着しているという情報をえた筆者と斎藤一三氏(横浜市立大学医学部寄生虫学教室)は、1999年7月、本島、石垣島、宮古島の調査を実施したが、1匹も発見出来なかった。しかし、沖縄在住のクモ学者によると、波照間島に多数生息していとのこと。当初、大騒ぎとなり、地域住民はパニックに陥ったが、幸いというか、咬まれて痛みを伴う例はわずか4件(沖縄本島)で、重症化し抗血清を注射した例は記録されていない。
セアカゴケグモは、オーストラリアでごく普通に生息しているクモで、地域住民は、その接し方を知っている。レッド・バック・スパイダーとして、直接手に触れることはないし、生息域のことも熟知している。不運にも咬まれた場合、セアカゴケグモ抗血清はどこの病院にもあり、抗血清が製造されたあとは、死亡例は記録されていない。
セアカゴケグモ(大阪産)
[3]ハイイロゴケグモ
セアカゴケグモ騒動の最中、横浜市検疫所の鈴木荘介氏が、横浜市山下公園近くの本牧でサンプリングした数匹のクモを筆者の医院に持参した。その中に日本では見たことがない2匹のクモがいた。そこで池田博明氏(クモ学者)に同定を依頼したところ、ハイイロゴケグモであることが分かり、日本初の記録となった。1995年12月8日のことである。その後、12月15日、関東地域のクモ学者ら18人が本牧での調査をおこない、約100匹のハイイロゴケグモと卵も確認した。どこから侵入したかについては不明である。
ハイイロゴケグモ(横浜産)
[4]幻のセアカゴケグモ(実は別のゴケグモ)
在留米軍基地所属のキーガン博士が、八重山群島の西表島でセアカゴケグモによる咬症例を発表したのは、1955年のことである。被害者は27歳の日本人男性。「7月10日、畑仕事中にズボンを這い上がって来た『赤い斑紋のある黒いクモ』に膝を咬まれた。30分位後に痛み始め、1時間後に激痛となった。そして、翌朝4時、呼吸困難に陥り、医師の治療を受けた」のである。1972年、筆者は、このクモの存在を調べる目的で、当時米国の統治下だった沖縄に渡り、本島、石垣島、西表島、与那国で探蜘蛛行をおこなった。25日にわたる調査だったが、残念ながら「ゴケグモ」は発見出来なかったのである。この調査から、沖縄には存在しない「幻のセアカゴケグモ」としてクモ学会誌に発表した。あれから23年後、降って湧いたセアカゴケグモ騒動。加納六郎博士(東京医科歯科大学教授)の標本と見比べた筆者は、八重山群島で咬症事件をおこしたセアカゴケグモが、実は全く別種のクモであることに気が付いた。腹部の赤い斑紋が全く違うのである。今ではヤエヤマゴケグモと呼ばれ、沖縄に局地的に生息している。
セアカゴケグモの抗血清(オーストラリアにて製造)
ヤエヤマゴケグモ(沖縄産)
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ゴケグモの毒性 |
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ゴケグモ毒には致死成分があり、マウスを簡単に殺す。人に対しては、痛みをおこしたり、筋肉のケイレンや麻痺をおこし、抗血清のない時代には、死亡者もでた。複雑な作用を持つゴケグモ毒の成分については、早くから関心が持たれ、1978年に神経毒の主成分がつきとめられ「α−ラトロトキシン」と呼ばれるようになった。なお、このタンパク成分の分子量の研究もすすめられ、いくつかの報告がなされている。
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世界の有毒種 |
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世界で問題となっている有毒種の毒を表1に示した。今までにゴケグモ類が日本に侵入したが、その他の毒グモもいずれは、船荷、航空機の荷物に紛れてひそかにやって来るかもしれない。地球は極めて狭くなったと言える。
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