「海外生活にかかわる有害動物」
日本に上陸する海外の有害動物たち  

東京医科歯科大学国際環境寄生虫病学 助教授
篠永 哲



<日本に上陸したサソリ>

 サソリは、クモの仲間の大型の節足動物である。昼間は、石の下、樹皮下、倒木の下、時にはビルの床下などに潜んでいて夜間に活動する。餌は昆虫やクモなどで、大きなハサミで捕らえて食べる。尾端の毒棘は大型の動物などに襲われた際に、防禦手段として用いる。夜間に活動するので、生息地では家の中に入ってくることもあり、荷物に紛れて他の地に運ばれることもある。

 以前、ラワン材など南洋材を丸太ごと輸入していた頃には、サソリ、クモ、ヘビなどがよく入り込み、荷揚げ人夫が荷揚げを拒否するなどの騒ぎがあった。現在では、材木のほとんどが製材されてから輸入されるので、このような事はない。

 最近は、野菜や果物など食料品の多くが外国から輸入されている。それに伴い、思いがけない動物が国内に入って来るようになった。輸入した生花の中からコブラが見つかったこともある。また、航空機内でサソリが見つかり、成田空港に緊急着陸したこともある。このサソリは、マダラサソリと思われる。

 何年か前のことである。メキシコからマンゴーを輸入した会社から電話があり、サソリを調べて欲しいとのことであった。早速そのサソリを持参してもらって調べることにした。虫体は底に水を入れたビンに入れてあり、すでに死んでいるものと思って手で摘んで顕微鏡を視ながら検索を始めた。ところが、しばらくするとサソリが動きだし、元気になってしまった。そこで、どのくらい毒性が強いか調べようと思い、マウスに刺させてみたところ、約25分で死んでしまった。刺した局所が腫れることもない神経毒の症状であった。結局そのサソリは、Centruroides noxiusというメキシコで最も危険なサソリで、7才以下の子供が刺された場合には、死亡することもあるということがわかり、和名をメキシコサソリとした。

 その後、輸入した会社では、メキシコから本種の抗毒血清を輸入して、万一の場合に備えている。幸いなことに、これまでにこの血清が使用されたことはない。

メキシコサソリ




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