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昆虫類 |
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■蚊: 蚊は、世界中どこに住んでいてもやっかいな吸血昆虫である。気候とは関係なくそれぞれの生活環境内に何種かが生息している。ただ吸血する場合と吸血と同時に感染症の媒介をする場合がある。マラリアやデング熱など感染症を媒介する場合には、より問題が大きくなる。
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アカイエカ、ネッタイイエカ:
温帯地域ではアカイエカ、熱帯、亜熱帯地域ではネッタイイエカが生息している。この2種は、ヒトの生活環境内にのみ生息しており、自然環境では見つからない。発生源は、下水溝、貯水槽、地上の留まり水、流れの遅い運河など様々である。農村部よりも都市に多く、開発途上国の都市では至る所で発生している。夜間吸血性で、吸血活動の盛んな時間帯は夜の10時頃から朝の3時頃までである。明るくなると物陰にかくれる。
これら2種は、バンクロフト糸状虫症(フィラリア)の媒介蚊として知られている。夜間にフィラリア患者の末梢血中に出現した糸状虫の幼虫(ミクロフィラリア)を、吸血時に体内に取りこむと、熱帯地域では10〜14日で感染可能な幼虫にまで成長し、再度蚊が吸血する際にヒトの体に入る。成虫は、リンパ管、リンパ節に寄生するが、虫体が蓄積されて症状が出現するまでには、約1年くらいかかる。糸状虫は、線形動物(線虫)の一種で人体内では分裂、増殖はしない。したがって、流行地に長期滞在しない限り感染しても発症の心配はない。
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コガタアカイエカ:
日本脳炎の媒介蚊として知られている蚊である。国内では、水田が主な発生源である。分布は広く、日本からアフリカ大陸まで生息しているが、日本脳炎の流行地は、日本からパキスタンまでである。国内での患者数は激減しており、年間10名前後であるが、ベトナムやネパールなどアジアの諸国ではかえって増加の傾向にあるという。発生源は、水田、湧水、湿地、沼などで都市よりも郊外の農村部に多い。アカイエカと同じく夜間吸血性である。
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ネッタイシマカ:
世界の熱帯地域に生息する代表的な蚊である。幼虫は缶詰の空缶、空瓶、タイヤの内側の溜まり水、貯水槽、竹の切株、樹洞などの小水域で発生する。この他、家屋内の生け花の花瓶に発生することもある。成虫は昼間吸血性で、昼間に家屋内で蚊に刺されたら本種もしくはヒトスジシマカであるが、ネッタイシマカの方がより屋内を好む。発生源が家の中や周囲にある場合が多く、花瓶など家屋内で水を溜める容器内で発生させないよう気をつけることが肝要である。本種は、デング熱の媒介蚊としてよく知られている。
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ヒトスジシマカ:
本来、アジアの熱帯から温帯地域にかけて広く分布する種であるが、近年古タイヤの輸出に伴い、北米から中南米にまで分布を拡げ、さらにアフリカやヨーロッパにも分布を拡げている。国内でも東北地方(古川市辺り)から南に生息している。夏には、家の庭先や周囲の雑木林、竹林や公園などに普通にみられ、昼間に吸血する。発生源は、ネッタイシマカと同様であるが、より屋外性で、ネッタイシマカは家屋内でも発生するが、本種は家屋の周囲で発生するのが普通である。吸血活動も屋外の方が活発である。デング熱の媒介蚊でもある。
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ハマダラカ類:
マラリアの媒介蚊としてよく知られている蚊である。しかし、全ての種がマラリアを媒介するわけではない。例えば、アフリカからは約120種のハマダラカが記録されているが、実際にマラリアを媒介するのは10数種にすぎない。アジア地域でも同じで、記録されている60数種のうち、主な媒介蚊は約10種である。発生源も様々で、日当たりのよい小川、水田、渓流の淀み、森林内の水溜まり、井戸、海岸の湿地など、そのほとんどが都市から離れた場所である。したがって、世界の熱帯地域の都市で生活していてマラリアに感染することは一部の都市を除いて稀である。住んでいる地域でのマラリアの現状を把握しておくことも重要である。
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蚊対策:
どこに住んでいても同じであるが、蚊に刺されないようにするのは簡単ではない。発生源対策は、外国で生活している場合はその国の政策があり、個人の関知する事ではない。瓶や缶詰の空缶などヤブカ類の発生源を無くすることくらいなら可能である。唯一の手段は自分で蚊に刺されないようにする事である。蚊が侵入してこないように窓には網戸をつける、夜間就寝時には蚊帳をつる、外出の時は防虫剤(リペレント)を塗布するなどである。また、蚊の習性も知っておくとよい。ネッタイシマカやヒトスジシマカなどヤブカ類は昼間吸血性であるのに、アカイエカ、コガタアカイエカ、ハマダラカ類は夜間吸血にくる。したがって、夜間に屋外で食事する際にはリペレントを塗っておくのを忘れないことである。屋内での蚊とり線香や電気蚊とり器などの使用、殺虫剤の散布も有効である。
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■ハエ類: ハエは、蚊と異なり感染症の媒介をすることはない。一般には、赤痢菌やコレラ菌などの細菌、赤痢アメーバやランブル鞭毛虫の嚢子、蛔虫など寄生虫の卵を体にくっつけて運搬するなど病原体の伝播者とされている。国内では、近年イエバエによる出血性大腸菌O−157の伝播が問題になっている。
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イエバエ:
イエバエは、以前には国内でも人家の内外で見られる最も普通なハエであった。しかし、最近では都市でのゴミ処理が瀕繁に行なわれるようになり、都市内からは姿を消している。そのかわり、ゴミ処理場や養鶏場、養豚場などでのイエバエ問題は深刻である。開発途上国のマーケットなどで、食物の上に真っ黒にたかっているのは、ほとんどがイエバエである。発生源は、その付近に捨てられた塵芥などである。本種は、家屋内侵入性がありよく室内に入ってくる。
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フタスジイエバエ:
熱帯地域でヒトによくたかるハエである。南西諸島から南太平洋地域、アフリカ諸国にまで分布している。人糞や動物の糞から発生する。ヒトや哺乳動物を好んでたかる。TVでアフリカの動物などを見ていると、ライオンやチンパンジーなどの体にたかっているのは、ほとんどが本種である。オーストラリアに分布する近縁種のMusca vetustissimaは、牛糞から発生し、とくにヒトの眼の周囲にたかるので有名である。Bush flyと呼ばれ、眼の周囲にたかるハエを追い払うしぐさから、Australian salutationという言葉があるくらいである。
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オビキンバエ:
東洋の熱帯地域に特に多いキンバエである。国内でも、九州南部から南西諸島の市街地で普通に見られる。発生源は、動物糞、動物死体、塵芥などであるが、汲み取り便所からよく発生するので、英名をOriental latrine flyという。東南アジアの国のマーケットの周囲にはとくに多く見られる。屋内侵入性はそれほど強くないが、自然界での赤痢菌など病原細菌の伝播者としての記録がある。
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ニクバエ類:
ニクバエ類は、卵胎性で卵ではなく幼虫を産む。食卓に食べ物を置いたままにしておいて、何時の間にか食物の上に蛆が這っていたなどの経験はないだろうか。このような場合は、ほとんどがニクバエのせいである。このような屋内侵入性のあるのは、温帯地域ではシリアカニクバエなど、東南アジアの熱帯地域ではツノアカニクバエが主である。食物に誘引されて室内に侵入し、蛆を産んでゆくニクバエは他にもある。夏期など気温の高い時期には、食物を出しっぱなしにしないよう注意が必要である。ハエの蛆を食物と一緒に食べた場合には、腹痛などが見られるが、一過性で排出されれば問題はない。
シリアカニクバエ
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コバエ類:
コバエというハエはいない。この呼名は、ショウジョウバエやノミバエなど小さなハエの総称である。小型なので目につきにくい、どのような小さな隙間からも侵入できる、餌が少しでも成長するなど、体が小さいことを最大に利用して繁殖する。
ショウジョウバエ類は、都市では腐敗した果物から発生する。したがって、マーケットや果物店の店頭、ゴミ箱の周囲などで見かける。感染症の媒介などはしないが、とにかく個体数が多い。家屋内では、発生源となる果物などを放置しないことが唯一の発生の防止対策で、殺虫剤などの散布は大発生したなど特別な場合のみにしたい。
ノミバエ類の種数は多い。ショウジョウバエのように、ふわっと飛ぶのではなく、強い脚で窓やゴミ箱の周囲をすばやく歩くのが得意である。幼虫は腐敗した動物質から発生するので、家屋内での発生源をなくすることが発生対策のひとつである。台所の塵芥の処理をこまめにすることで発生が防げる。
ショウジョウバエ
コシアキノミバエ
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ヒトヒフバエ: :ヒトヒフバエは、中南米の低地の森林地帯に生息しているハエで、幼虫がヒトや哺乳動物に寄生して生きた組織を食べる。寄生を受けると激しい痛みがある。最近の旅行ブームで、感染を受けたままで帰国するヒトが、時にみられる。幼虫は、皮膚に穴を開けて尾端の気門を外に出して呼吸しているので、軟膏などをたっぷり塗布して呼吸が出来なくすると這い出してくる。
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ヒトクイバエ:
ヒトクイバエは、アフリカに生息するハエである。幼虫は、ヒトや哺乳動物に外部寄生する。成虫は、糞尿で汚染された乾操した砂地や洗濯物などに産卵する。孵化した幼虫はヒトに接触すると数十秒で皮膚に潜入し、生きている組織を食べて育つ。約8日で、皮膚から脱落して蛹化する。寄生を受けると、ヒトヒフバエと同じく痛みが激しい。生息地では、洗濯物を取りこんだら、必ずアイロンをかけることである。
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ツェツェバエ:
アフリカには、23種のツェツェバエが生息している。これらのうちの何種かは、アフリカ睡眠病を媒介する。ケニアやタンザニアなどでの野性動物を見るツアーなどでよく車の中によく飛びこんでくる。飛ぶのがとても速く、体に止まったと思うまもなく、衣服の上からでも吸血する。サファリツアーなどに参加する場合には、リペレントを用意するとよい。
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■ゴキブリ類: 家屋害虫としてゴキブリほど世の奥様方に嫌われている昆虫はない。元もとは、アフリカ起源で、中世の大航海時代の頃から、船によって世界中に分布を拡大したという。しかし、このような種はチャバネゴキブリ、ワモンゴキブリ、トーヨーゴキブリなど僅かの種にすぎない。これらの種は、現在では世界中の家屋内に生息し、嫌われ者になっている。ゴキブリは、熱帯起源の昆虫なので気温の低い低緯度地域では少ない。しかし、近年の暖房の完備などにより、これまでに生息していなかった都市にも分布を拡げている。本来のゴキブリは、熱帯雨林に生息する昆虫で、東南アジアやアフリカの森林には、色とりどりの宝石を思わせるようなたくさんの種類のゴキブリが生息している。
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チャバネゴキブリ: 体長10-13mm,褐色で小型のゴキブリである。成長速度が速く、約3カ月で卵から成虫にまで発育するので、高温で餌が豊富な環境下では個体数が多い。開放的な家屋よりも、大きなビルや団地などに多く見られる。家屋内では、机の引き出し、壁の隙間、本棚、食器棚、冷蔵庫のモーター部分などあらゆる小空間を利用して生息している。集合性があり、昼間は幼虫、成虫ともに集団で隠れていて夜間に活動するが、時には昼間でも出てくる場合もある。一般の家屋では、食物のある台所の周辺にとくに多い。世界の熱帯、亜熱帯地域には、近縁種のチャオビゴキブリが生息している。チャバネゴキブリと同じく約3カ月で成長する。
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ワモンゴキブリ: 体長30-36mm、黒褐色の大型のゴキブリである。世界の熱帯、亜熱帯の他、暖房さえ完備していれば北海道のような寒冷地でも生息できる。国内でも東京、横浜や大阪など大都市で見られる。開発途上国の都市では、最も普通に見られる。家屋内のみでなく、屋外の石垣の隙間、ゴミ箱の周囲、マーケットなどで山積みされたゴミの下などにも生息している。家屋内で最も多いのは、食物の多い台所であろう。卵から成虫までの期間は数カ月、成虫の寿命は200日以上である。雌はその間に数十個の卵鞘を産み、1卵鞘中の卵数は約15個である。本種の他に、近似のコワモンゴキブリやトビイロゴキブリなども生息しているが、両種ともワモンゴキブリよりも個体数が少くなく、やや屋外性である。
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ゴキブリ対策: 体長30-36mm、黒褐色の大型のゴキブリである。世界のゴキブリ対策には、まず潜伏場所を見つけなければならない。家庭での多くは、調理台、冷蔵庫のモーター部分、流しの下、戸棚、机の引き出しなどであろう。このような場所に、先端に細長いノズルのついたエアゾール剤を注入し、ゴキブリが飛び出すかどうか確かめてみる。潜伏場所が見つかったら、その部分に殺虫剤の残留噴霧をするか、塗布用のエアゾールを注入する。その上に毒餌を用いるとより効果が上がる。毒餌は、ゴキブリの出没する場所に設置する。子供などの眼にふれない場所がよい。これだけで安心しないで、出来る限り台所などにゴキブリの餌となる食物を残さないことも大切である。ヒトの目には小さくても、ゴキブリにとっては十分な餌となる場合が多いので、床の掃除もこまめにすることである。
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■アリ類: アリの種数は多いので、特定の種名をあげることは出きない。特に、熱帯地域では、種数も個体数も国内とは比較にならないほどである。以前には、台所の砂糖壷などにアリがたかった経験もあるが、最近はあまり話題にならない。家の庭などにいるアリは、昆虫の死骸を食べたり、花の蜜をなめたりしているが、家屋内に入ってくることはあまりない。花壇などに巣をつくって、土を盛りあげているとつい退治したくなるが、アリ用スプレーなどで殺す必要もない。
問題は家の中に侵入してきた場合である。アリは、ミツバチやスズメバチなどと同じく社会生活をする昆虫で、女王と働きアリなど複雑な階級に分化している。巣はほとんどの場合屋外にあり、家屋内に入ってくるのは働きアリで、道しるべのマーク(フェロモン)をつけながら行動する。餌がみつかると大急ぎで仲間に知らせる。餌になるものは、昆虫などの死骸、果物、砂糖など様々であるが、地面や床に置いてあるペットの餌入れなどもねらわれやすい。
アリが家屋内に侵入しているのを発見したら、まず何処から来ているかを調べる。アリの道をたどっていって、外から来ている場合には巣を見つけやすいが、壁の中に入りこんでいると巣を探すのは困難である。とりあえずは、アリの道しるべフェロモンを除いておかねばならない。アリの道を洗剤などでよく洗っておくとよい。巣が見つかれば殺虫剤などで処理をしてもよいが、屋外の場合はそれほど目の敵にするほどのことはない。特に、熱帯地域のアリは、そんなに簡単に駆除できない。国内にも生息しているが、イエヒメアリは、最も小型で、歩くのも速い。家屋内のみで見つかり、巣も発見できない。シンガポールのホテル9階の部屋で標本を食べられた経験がある。このアリには、物理的に入ってこないようにするしか方法がない。
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■シラミ: シラミは、一生を動物の体表で過ごす吸血昆虫である。吸血する動物(宿主)は決まっており、他の動物から吸血することはない。ヒトには、ヒトジラミとケジラミの2種のシラミが寄生する。ヒトジラミには、アタマジラミとコロモジラミという2亜種があり、生態的に住みわけている。形態は全く同じである。
国内では、保育園児、幼稚園児や小学校の低学年の生徒の間に見られる。熱帯の開発途上国では、アタマジラミもコロモジラミも普通に見られるが、気温の高い低地ではアタマジラミが、気温の低い高山地ではコロモジラミが多い。
ケジラミの感染率などは、寄生部位などからして不明である。どちらの種についても、寄生されたら殺虫剤による処理が有効である。国内では、スミスリンパウダーが市販されている唯一のシラミ駆虫剤である。私がイギリスのロンドンで経験したのは、小学校の保健婦が父兄を集めて児童のシラミについて話した後で、有機燐系殺虫剤マラソンのアルコール溶液を配布していたことである。駆除効果についてはよくわからなかった。もしもシラミに感染したら、コロモジラミの場合には、下着を熱湯で処理すれば問題はない。アタマジラミが感染した場合は、スミスリンパウダーで駆虫するとよい。
アタマジラミ
コロモジラミ
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■トコジラミ: トコジラミ(ナンキンムシ)には、トコジラミとネッタイトコジラミの2種が知られている。形態も生態もほとんど同じであるが、トコジラミは温帯地域に、ネッタイトコジラミは熱帯地域に生息する。国内では、後者が南西諸島に分布している。昼間は、柱、壁、机やベッドの隙間などに潜み夜間に吸血する。雄雌の成虫と幼虫も吸血するが、吸血部位は寝具や衣服からはみ出した手、足、顔面など露出部で、毛布の中などに入り込んでまで吸血しない。最近は、国内ではほとんど見られないが、開発途上国では、まだ被害に会うこともある。引っ越し荷物に混じって移動することがあり、メイドなど使用人の荷物により持ち込まれる可能性もある。
トコジラミが見つかったら、柱や壁の隙間など夜間に潜んでいそうな場所を殺虫剤処理を行なう。市販のエアゾールで十分である。ノズル付きのエアゾールが有ればより効果的である。
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■サシガメ類: サシガメ類は、一般に昆虫などを捕食している昆虫であるが、温血動物から吸血する種があり、中南米ではシャーガス病の媒介昆虫として知られている。南西諸島から東南アジアにかけて分布するオオサシガメも、古くから吸血性サシガメとして地元の人々はよく知っていた。
中南米には、70種以上の吸血性サシガメが分布しているが、そのほとんどは野外に生息している。家屋内に生息し、シャーガス病の媒介をするのは数種にすぎない。しかし、シャーガス病に感染すると良い治療薬がなく危険な感染症である。サシガメが生息しているのは、都市部の民家などではなく、都市から離れた農村部の泥壁で作られた民家などで、一般の観光客や都市に住んでいるヒトが感染する危険性はすくない。トコジラミと同じく、夜間吸血性である。テレビの取材や学術調査などで民家などに宿泊するような機会がある時には、十分注意が必要である。
ブラジルサシガメ
オオサシガメ
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■ブユ類: ブユの幼虫は、流れのある渓流や河川で育つので、都市内で被害を受けることはほとんどない。ハイキングに出かけたり、キャンプなどの際に、渓流の近くで襲われることがある。吸血活動が盛んな時間は、朝夕の薄暮時であるが、曇の時には日中でも活動する。熱帯地域よりもかえって北方の地域で夏に大発生する。生活している地域で毎年大発生している場所があれば、地元のヒトが知っているはずである。発生する時期などの情報を入手しておくとよい。
襲われた時には、忌避剤を使用する。有効成分のDeet(N,N-Diethyl-m-toluamide)を10%以上含有している製品が効果的と言われているが、市販の製品では、含有率は明記されていない。
アシマダラブユ
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■ヌカカ類: ヌカカは、ブユよりも小さな吸血昆虫で蚊の仲間である。低地の森林内や海岸などで発生する。発生個体数は多く、そのピーク時期には頭髪の中、衣服の袖やズボンのすそからも入り込んで吸血するので、とてもやっかいである。欧米の樹木の多い公園、熱帯、亜熱帯地域のマングローブ地帯などで激しく襲われた経験がある。ロシアの沿海州の森林では、食事もできないくらい襲ってくるそうである。
成虫の吸血から身を守るには、帽子をかぶる、袖口や裾からの侵入を防ぐ、忌避剤を使用するなどしか方法はない。吸血活動の盛んなのは、ブユと同じく朝夕の薄暮時であるが、曇天の日や薄暗い森林内では日中でも吸血にくる。一定の時間帯に活動が盛んとなり、その後はぴたっと活動を中止することもある。
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■サシチョウバエ: サシチョウバエは英名をsand flyといい、スナバエと誤訳されている場合もある。アメリカでは、ヌカカのこともsand flyというのでややこしい。サシチョウバエは吸血性で、原生動物のリーシュマニアが病原体であるリーシュマニア症の媒介昆虫である。ヌカカと同じく小型で、蚊帳の目も潜ってくる程である。熱帯、亜熱帯地域には種数も多い。リーシュマニア症には、内臓リーシュマニア症、皮膚粘膜リーシュマニア症、皮膚リーシュマニア症などがある。最もよく知られているのは、内臓リーシュマニアを媒介するPhlebotomus papatasiiである。日本人の症例の多いのは、皮膚リーシュマニア症で、中近東で感染した症例が約20例ある。
防禦法としては、ヌカカの場合と同じで、忌避剤の使用と夜間の網戸と蚊帳の使用がある。体が小さいので完全ではない。
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■アブ類:
アブは、ブユやヌカカと異なり大型の吸血昆虫である。野外で発生し、牧場などで牛・馬など大動物から吸血する。大きくて、目だつのでハイキングや登山中にアブがやってくれば誰でもすぐに気づき追い払う。国内では、大発生して激しくヒトを襲ってくるイヨシロオビアブがいる。本種の発生のピーク時には、体の周りでネットを振るとずっしりと重くなるくらい採集できる。北海道に分布するゴマフアブも、かなりしつこく襲ってくるが、イヨシロオビアブほどではない。このような種は、国外ではあまりみられない。熱帯地域では、種数は多いが個体数はそれほど多くない。アブ類は、衣服の上からでも吸血し、痛みはとても激しい。
イロシロオビアブ
ゴマフアブ
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■ダニ類: ダニの仲間には、大型のマダニ類と小型で一般にコダニ類と呼んでいるダニがいる。マダニは、肉眼でも見えるので、刺されても原因がわかるが、コダニ類は見えにくいので、皮膚に発疹ができると一般人はもとより皮膚科医でもダニのせいにしてしまう。マダニ類は、野外性のダニで森林内や牧場、草原などで動物から吸血している。ヒトが被害を受けるのは、ハイキング、登山、動物を見る旅行などの時である。熱帯地域では、牛にものすごい数のマダニが吸着しているのを見かけるが、ヒトには稀である。
ネパールのチトワン国立公園で、ゾウに乗って動物を見に行った2名が、帰国後にマダニの吸着に気づいて皮膚科に来診した例がある。北方地域の笹原や牧場では、個体数も多く、また被害にあう機会も多い。北海道で、クマザサの中を1日歩いてくると、衣服によくマダニがくっついている。欧米でも同じことが言える。高山のトレッキングよりも、平地の公園での散策などの方が吸着されやすい。
欧米では、マダニによって媒介されるライム病という病原体がスピロヘータの感染症がある。媒介する種類は分かっている。この他、ヨーロッパからロシアの沿海州にかけて森林性のマダニ媒介性の脳炎がある。発症すると良い治療薬もなく、危険である。ワクチンが製造されているので入手することをお勧めする。ライム病のワクチンも製造されており、これらのワクチンの入手先は下記(※)の通りである。
マダニに刺されたら、そのダニを持って皮膚科医に相談するとよい。野外に出かけたら、帰宅後、風呂などで体にマダニが吸着していないか全身を点検してみるとよい。吸着初期は小さくて見つけにくい。マダニは、吸着して後、十分に吸血すると数日で脱落する。その時には、かなり膨大している。
(※)
・ライム病ワクチン:商品名 LYMErix
メーカー SmithKline Beecham Biologicals(米国)
(現在はGlaxoSmithKline)
・マダニ媒介脳炎ワクチン:商品名 Encepur
メーカー Behring(独)
マダニ
イエダニ
トリサシダニ
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コダニ類: コダニと呼ばれるダニの種類は多い。家屋の内外で遭遇するのは、ネズミの寄生ダニであるイエダニと鳥類の寄生ダニのトリサシダニやスズメサシダニなどである。いずれも動物やヒトから吸血する。被害を受けた家屋の地下室、天井裏や軒下にネズミやスズメ、ムクドリ、ハトなどの巣があれば、これらのダニを疑う。体長が0.6-0.7mmなので、吸血したダニは、肉眼でも小さな赤い点のように見える。防除には、ネズミやトリの巣の除去、室内の殺虫処理が必要である。
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ツツガムシ: ツツガムシは、リケッチアを病原体とするつつがむし病を媒介するダニである。つつがむし病は、北海道を除く日本から南はニューギニア、西はパキスタンにまで拡がっている感染症である。国内では、毎年数百人の患者が発生しているが、東南アジアなどの実体はあまり把握されていない。国内では、媒介種のアカツツガムシが夏に、フトゲツツガムシとタテツツガムシは、秋から春にかけて年に1回のみ感染の機会をもつが、熱帯では1年中サイクルが回っていると考えられる。感染は屋外で起こるが、都市よりも農村部に流行地がある。つつがむし病の媒介はしないが、吸着時に掻痒性の皮膚炎を起こすツツガムシがヨーロッパ、アメリカ大陸と東南アジアで古くから知られている。
アカツツガムシ
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■クモ類: 毒グモとして最近知られるようになったのは、ゴケグモである。最も危険なのは、クロゴケグモである。他の種に比べて致命率が高い。数年前に日本に入って来たセアカゴケグモは、現在では日本からオーストラリアにまで分布している。オーストラリアでは、本種に対する抗毒血清が製造されている。ゴケグモの仲間は、倉庫、床下、車庫、貯木場、石垣の間、塀の上部、側溝などあらゆる場所に簡単な巣を作っている。直接掴まないかぎり被害はない。南北アメリカに生息するバイオリン・スパイダーは、家屋内の額縁の裏、衣服架け、寝室内などで見つかる。咬まれると激しい壊死をおこす。咬傷例も多い。
バイオリン・スパイダー
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■サソリ類: サソリ類は、熱帯、亜熱帯に広く分布している。最も北方に分布するのはキョクトウサソリで、中国では食料とするのでよく知られている。熱帯地域の森林には多くの種類がいるが、樹皮下や石の下などにいるので、積極的に探さないと見つからない。かえって中近東やアフリカの砂漠地帯の方が、接触する機会が多い。いずれにしてもサソリは、夜間活動性であり、家屋の周辺にいたのが偶然に侵入することはある。これも、その家屋の立地条件、例えば周囲に森林があるなど、による。危険な種は、中南米、中近東やアフリカなどに生息するが、地域ごとに特定の種がいるので、その地域での危険種についての情報を得ておくことと治療血清の有無なども知っておくとよい。都市での生活では危険性はほとんどない。
キョウトサソリ
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■ムカデ類: ムカデは、頑丈な口器で咬むので恐れられているが、クモなどと同じく自己防衛の手段として用いるので、直接掴まないかぎり被害にあうことはない。夜間活動性であり、家屋内にも入ってくることがある。どこでも同じであるが、郊外の住宅地で、庭木や置き石などがあると、ムカデが住みつくことがある。また、家屋が森の近くの崖下などにあると、夜間に徘徊中に滑り落ちてきて家屋内に侵入することがある。被害を受けるのはほとんどの場合夜間である。郊外の住宅では、ムカデのかくれ場所となる石、倒木、煉瓦などの下を点検しておくと被害が少なくなる。
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■ヤマビル:
ヤマビルは、温帯から熱帯地域にまで広く分布している。国内でも東北地方から南西諸島までに分布し、発生数の多い地域では、その被害に悩まされている。東南アジアでは、低地よりも500mから2,500mくらいの低山地に多く見られる。ボルネオ島のキナバル山の山麓やネパールのアンナプルナなどのトレッキングでは、道端の低木の枝にぶら下がっているヤマビルを多数見かける。これらに少しでも接触すると、体に乗り移り、どのような小さな隙間からでも潜り込んで吸血する。吸着されても痛みもなく、ヒルジンという酵素を分泌して凝固を防いで吸血する。気がついた時は満腹して小指くらいの大きさになっていることもある。
ヤマビルから身を守るには、これといって特別な方法はない。虫避けの忌避剤をズボンの裾や手足に塗布しておくくらいである。吸着しているヒルを見つけたら、忌避剤をスプレーするとすぐに離れる。
牛を吸血中のヤマビル
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■ヘビ類:
熱帯地域で森林(ジャングル)に入ったら、毒ヘビの危険に晒されると思っているヒトが多い。また、TVなどで砂漠地帯やサバンナの毒へビの映像を見ると、こちらも危険と思うだろう。しかし、実際に生活してみると毒へビなどそんなにいるものではない。毒へビの危険性は、それぞれの家屋の立地条件によって異なる。
パプア・ニューギニアのポートモレスビーで実際に聞いた話である。丘の中腹に建てられた家で、山側の玄関から突然Papuan black snake?が滑り下りてきて、開けてあった裏のドアから下に下りて行ったという。私がその家を訪門した直前のことであった。このヘビは、昼間よく活動し、ドライブしていると道を横ぎるのがよく見られる。ナイジェリアのイフェ大学にいた時である。キャンパス内の森を散歩していると、突然樹の上からグリーンマンバという毒へビとカメレオンが目の前に落ちて来た。ヘビがカメレオンを襲って両者ともに落ちたのであろう。このような例は稀で、普通に生活していると毒へビに遭遇することはほとんどない。
ただ、その地域にどのような毒へビが生息しているか、抗毒血清が製造されているかどうかなどの情報は仕入れておくとよい。
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■海生動物:
最近は、オーストラリアや南太平洋地域のリゾート地に旅行するヒトが増えている。また、旅行者でなくとも海岸の保養地で過ごすヒトもいる。特に、オーストラリアのグレートバリアリーフはその規模も雄大で、よく知られている。国内でも、沖縄の珊瑚礁は、世界的でよく発達している。珊瑚礁は、そこに生息している動物相が豊富で、美しい種類が多く、水中眼鏡で見ているだけでもあきない。しかし、この中にはかなり危険な有毒動物も生息している。
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腔腸動物(クラゲ、イソギンチャクの仲間):
国内でも、夏の海水浴シーズンには、電気クラゲと呼ばれるカツオノエボシやアンドンクラゲによる被害がよくある。また、沖縄の珊瑚礁では、ハブクラゲ刺傷による重症例、死亡例も報告されている。オーストラリアには、ハブクラゲによく似たChronex fleckeriというクラゲが生息している。症状も似ているが、本種の方が激しい。本種に対しては抗毒血清も製造されている。イソギンチャクの仲間にも危険な種がある。沖縄の珊瑚礁の礁池に生息するウンバチイソギンチャクは、触手に触ると激しい痛みがあり、後にその部位が壊死を起こす。国外の珊瑚礁にも同様の種が生息している。一見すると海綿のようなイソギンチャクである。
アンドンクラゲ
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棘皮動物(ウニ、ヒトデの仲間):
ウニに鋭い棘があることは、誰でも知っている。これらの中に鋭い棘と毒物質をもち刺さると激しい痛みがある種がいる。ガンガゼ、ガンガゼモドキなどという種類である。これらの棘は、脆く折れやすい。一寸と触っても皮膚に刺さり、折れてしまう。また、痛みも激しい。刺さったら外科的に取り出すしか方法はない。
ガンカゼ
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刺毒魚類:
日本近海での刺毒魚といえば、オコゼ、ハオコゼ、カサゴ類、ゴンズイ、エイ類などがあげられる。これらは、釣りの際や料理中などに稀に刺される場合があるが、海水浴などで遭遇することはほとんどない。しかし、熱帯の珊瑚礁では、刺毒魚の同じ種の個体数は少なくても種類数は多い。オニダルマオコゼは、stone fishと呼ばれ、沖縄の珊瑚礁の池礁に生息し、石ころのように見える。本種の背ビレには、猛毒があり刺されると死亡することもある。オーストラリアにも近縁種が生息しており、本種に対する抗毒血清が製造されている。
オニダルマオコゼ
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