「海外赴任と成人病」 成人病を持って海外赴任した場合の健康管理
B型・C型慢性肝炎
ニチメン診療所 大西 真
海外赴任前にやっておくこと(表1)

 企業の診療所やかかりつけの病院で是非健康診断を受けてください。慢性肝炎にも軽いものから重い肝硬変に近いものまで、いろいろな程度があります。

採血をしてもらい、肝機能検査で、GOT、GPTといった値がどの程度であるか、又、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのチェックをしてもらいます。B型肝炎ウイルスが陽性の場合は(HBs抗原陽性)、さらにHBe抗原をもっているかどうかを調べておきます。これが陽性の場合は、ウイルスの量が多いので、血液や体液を介して他人にうつす危険も高く、又、肝機能が悪い場合もしばしばあります。

表1 慢性肝炎の人の健診項目
血液検査 GOT、GPT、γ-GTP、ALP、総蛋白、アルプミン、ビリルビン、血算(特に血小板)、HBs抗原、HBe抗原(HBs抗原が陽性の場合に測定)、HCV抗体
腹部超音波検査 慢性肝炎の程度や、肝癌の有無を調べる。
胃内視鏡検査 食道静脈瘤の有無を調べる。

図1 腹部超音波検査:肝臓癌を認める

 C型肝炎ウイルスが陽性の場合は、ウイルスの型を調べてもらいましょう。ウイルスの量が少ない場合や、ウイルスの型が治療に良く反応する場合は、インターフェロン療法が有効ですので、主治医と相談の上、治療をしてから(6カ月かかります)赴任する方法も良いと思います。

 又、肝炎ウイルスをただもっている場合(無症候性キャリア)もあり、その場合は正常の人とかわりません。主治医によく診断してもらって下さい。

 又、腹部超音波検査を是非受けて下さい。肝臓癌の有無はたちどころにわかりますし(図1)、慢性肝炎の程度も、ある程度推測できます。もし、可能でしたら胃カメラの検査も受けて下さい。肝臓が悪い人の場合、静脈癌という血管のはれができて、破裂して出血することがあります。

 このような検査を受けたあと、主治医の先生から海外渡航にあたっての注意をよくお聞き下さい。もし、肝硬変と診断された場合は、短期渡航は可能な場合もありますが、一般的には、長期の海外赴任は控えるのが無難です。

海外に赴任してから

 慢性肝炎の悪化を防ぐことと、定期的な健康診断を受けることが最も重要です。

 B型慢性肝炎の場合は、時に急性増悪をきたすことがあり、注意が必要です。やはり過労はさけ、睡眠時間は充分(できれば8時間以上)とることです。禁酒の必要はありませんが、アルコールは控えめにして下さい。ビールなら1本以内、日本酒なら1合以内、ウィスキーならシングルで3杯以内にして下さい。

 C型肝炎の場合、人にうつす危険は低いですが、B型肝炎(特にHBe抗原陽性でウイルス量が多い場合)では他人に血液や体液を介してうつす危険があります。髭を剃っている時や怪我をした時など、出血した場合は、他人に血液をさわらせずに、自分で処理することが大切です。また、セックスを通じて他人にうつす危険は大きいので、海外赴任中、夜遊びなどは絶対にしないことです。逆に現地の人と夜遊びをして肝炎やエイズをうつされることもあります。配偶者が、もし、B型肝炎に対する抗体を持っていない場合は、赴任前にワクチンを打つことをおすすめします。食事を一緒にしたり、入浴したり、といった普段の生活では肝炎をうつす心配はありません。

 C型肝炎の場合には徐々に進行することが多く、急性増悪は比較的少ないことが多いです。又、人にうつす危険は少ないのですが、やはり可能性はあるので、B型肝炎の場合と同様な注意は必要です。

 現地の医療事情によって難しい場合もありますが、理想的には半年毎に採血し、肝機能チェックと、可能でしたら腹部超音波検査を受けることをすすめます。特に超音波(エコー)検査は、肝癌の早期発見に極めて重要です。

 もし、現地の医療事情で、なかなか検査を受けられない場合は、一時帰国された際に、是非検査を受けて下さい。

 慢性肝炎の食事療法は、偏りのないバランスの良い食事をとることが大切です。必須アミノ酸(豆類、豆腐などの植物性蛋白食品には多く含まれている)を充分に含んだ良質のタンパク質をとることが大切です。脂肪分は控えめにし、ビタミンやミネラルが不足しないように野菜や果物も充分にとることです。便秘はよくないので、野菜など繊維の富んだ食事をすることです。カロリーのとりすぎは脂肪肝をきたし、肝機能の悪化をまねきます。

 慢性肝炎の治療法では、有効な飲み薬はなく、インターフェロンという注射薬が、ある程度有効であるといったところです。肝臓に効く(?)という宣伝にのせられて、漢方薬や栄養剤などをやたらに飲んだりすることはやめましょう。思わぬ副作用がでることがあります。そんなわけで、過労やアルコールの飲み過ぎによって、慢性肝炎を悪化させないことが重要です。

又、他人にうつさない注意も必要です。もし肝硬変に進みかけた場合は、肝癌や食道静脈癌などといった危険も増加しますので(表2)、早めに海外赴任を切り上げて帰国することをおすすめします。

表2
正常
肝炎ウイルス(B型、C型)
急性肝炎
↓治癒しないと慢性化
慢性肝炎
↓肝臓の線維化
肝硬変(食道静脈瘤、腹水、黄胆、肝性脳症)
肝癌


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