「海外赴任と成人病」 成人病を持って海外赴任した場合の健康管理
脂肪肝
三菱商事診療所長 山田 隆治
はじめに

 脂肪肝とは一般的には中性脂肪が肝細胞に過剰に蓄積した状態を言います。これは丁度フランス料理の「フォアグラ」を思い浮かべていただければいいと思います。フォアとは肝臓、グラとは脂肪のことで、こってりと脂肪がのって肥大した肝臓という意味です。実際脂肪肝の人に肝臓生検を行い顕微鏡で観察してみますと肝小葉の30%以上の領域で肝細胞に著明に脂肪滴が蓄積しているのが認められます。

日常皆さんがドック検査を受けた際、血液生化学検査や腹部超音波検査で脂肪肝といわれた方はかなり多いと思います。脂肪肝の原因として一番多いのは栄養過多による肥満、アルコールの飲み過ぎなどですが、その他にも糖尿病、内分泌の病気、薬剤の服用:副腎皮質ホルモン、抗生物質(テトラサイクリン)等でも起こります。肝臓の中の脂肪はいつもは一定して保たれていますが何らかの原因によって過剰に増えた脂肪が肝細胞にたまり、細胞内の小器官が圧迫され肝臓の機能が低下して障害を引き起こします。

脂肪肝の診断

1.血液生化学検査(肝機能検査)
 脂肪肝の場合血清トランスアミナーゼ(GOT、GPT)が上昇しますが大部分の例では100単位以下のことが多く、慢性肝炎などの場合と異なり余り変動しないのが特徴です。栄養過多による脂肪肝の場合はGOT<GPTとGPT優位のことが多く、アルコール性脂肪肝では逆にGOTが優位になります。コリンエステラーゼ(ChE)、γGTP、ALP等も上昇しますが通常は余り大きな上昇は認めません。しかしアルコールが原因の脂肪肝の場合はγGTPは300単位を越える場合がかなりあります。

2.腹部超音波検査(US)
 肝機能検査で脂肪肝が疑われる場合2次検査として一番確かな診断方法は肝臓生検ですが入院が必要であり、多少検査のリスクもありますので現在では超音波検査やCT検査で確定診断をすることが多いのが現状です。超音波診断の特徴的な所見は以下の4つが主なものです。

1)肝内エコー輝度の上昇
 肝臓に脂肪がたまっていると肝内部がキラキラ輝くように高輝度を示します。

2)肝・賢コントラストの増大
 脂肪滴によってキラキラ輝くように写る肝臓と、脂肪が余りたまらず黒っぽく写る腎臓の実質とが強いコントラストを示すのが特徴です。

3)肝深部エコーの減衰
 肝内の多数の脂肪の固まりによる反射が、超音波の波長が深部に到達するのを妨げ、深部のエコーが減衰し深部の像が不明瞭となります。

4)脈管像の消失
 これも(3)と同じ現象で、門脈や肝静脈の写りが不明瞭となります。

治療

 脂肪肝を来した原因がはっきりしている場合は、まずその原因を除去することが原則となります。栄養過多による脂肪肝の場合は一日の摂取カロリーを押さえて体重を減量すれば改善してきます。間食は一切避け、アルコールを控え、一日20〜30分以上の持続運動(軽いジョギングやエクササイズウオーキング等)を行うことも大切です。アルコール性脂肪肝の場合は当然の事ながら禁酒が絶対条件となります。また脂肪肝を伴った糖尿病では1600カロリー/日(20単位)の糖尿病基本食の献立をしっかりと覚え、糖尿病の程度により経口糖尿病薬やインスリン治療も必要となります。基本的には脂肪肝は食べ過ぎや飲み過ぎで肥満となっている人に多い病気ですから脂肪肝を治すにはアルコールや甘いものの摂り過ぎを止め、正しい食事療法と毎日の一定の運動で肥満を解消することが治療の一番の近道です。

こんな食生活の人は要注意!

 図1にみられるような食生活習慣を送っている人は要注意です。大切なポイントは3食出来るだけ均等に食べる事、決して早飯はしない事、夜9時を過ぎたら出来るだけ飲み食いはしない事、アルコールは少量をたしなんで食事と会話を楽しむべきものであり、決して量を多く飲まないようにする事などです。特別な例外を除いては、脂肪肝は直ちに死に結びつくような病気ではありませんが、それを生み出している生活環境が同時に多くの成人病を引き起こしやすいということが問題なのです。わが国では死亡原因の第1位はガン、2位は心臓病、3位は脳卒中ですが、これらは皆成人病と言われているものです。

現代社会においては食生活の欧米化が進み過食・飽食の時代となっていることが多くの成人病を生み出す原因となっています。確かに食生活の習慣はなかなか変え難いものであり、間違った食生活を送っていて動脈硬化が進んでいても直接的に痛いとか、痒いといった症状を現さないため、かなり病状が進行してから高血圧、心筋梗塞、脳卒中などの成人病を併発してくるという厄介さがあります。「高くつく、食べ過ぎ、飲み過ぎのツケ」という事を肝に銘じて、今一度私たちの生活を見直してみる必要がありそうです。その一歩を踏み出すのは今しかありません!


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