腸炎ビブリオは塩水を好む特殊な細菌で、海産魚介類から感染する。国内においても夏期の食中毒の主な原因であるが、熱帯、亜熱帯地方ではさらに頻度が高い。経過は一般的に良好であるが、これらの地方で生の魚介類を避けることは当然である。
カンピロバクター腸炎は主に小児にみられ、家畜の肉類から感染する。熱帯、亜熱帯地方で血便を伴う小児の下痢症の約半数は本菌が原因といわれている。
ランブル鞭毛虫症(ジアルジア症)はアメーバなどと同じ原虫の一種で、熱帯、亜熱帯の衛生環境の悪い所に多い。無症状のことも多いが、典型的な場合には悪臭のある脂肪便様下痢を起こす。多くの場合は自然に治癒するが、胆嚢炎を起こすこともある。
ウイルスによる下痢症は先進国、途上国を問わず見られ、乳幼児の下痢の半数を占める。成人では軽症のことが多いが、途上国では乳幼児の死亡例がかなり見られる。
以上海外赴任時にみられる下痢症の主なものについて述べたが、予防のためにまず注意しなければならないのは、言うまでもなく生水、生物の摂取である。とくに開発途上国の衛生環境の悪い所では絶対に避けなければならない。途上国の水道水は60%〜80%大腸菌腸性との統計もあり、ミネラルウォーターでも国によっては絶対安全とは言えない。当然、煮沸が必要で、全ての細菌、寄生虫、ウイルスは5分間の煮沸で死滅する。また氷は水道水から作られることが多いので、これも避けなければならない。
水に関しては熱帯、亜熱帯地方では硬水のことが多く、赴任直後にはそれだけで一過性に下痢を起こすことがある。この場合は大体一週間位で自然に落ち着くことが多い。
感染性の下痢の治療に関しては、まず水分と電解質の補給が基本である。コレラなども含めて大半はこれで自然治癒する。脱水が強い時には点滴で輸液を行うが、軽症ならばスポーツ飲料などを飲むだけで良い。いわゆる下痢止めの薬は多くの場合有効だが、時に経過を長引かせることもある。その他、赤痢など特殊な細菌、原虫感染症の場合には抗生物質が必要である。これらの感染の可能性のある地域に赴任する場合には、予め夫々に適した抗生物質について産業医に相談をして対策を考えておく必要がある。症状としては下痢症状が強く、とくに血便が出るような時、発熱が続くような時は要注意である。
このような場合には、必要に応じて現地の医療機関を受診する事も考えねばならず、出来得れぱそれらの事前の調査が望ましい。