「海外赴任と成人病」 成人病を持って海外赴任した場合の健康管理
歯周病
東京医科歯科大学 田中 健一
 カリエスが歯質の崩壊であるのに対し、歯周病は歯を支える歯周組織の疾患といえます。厚生省が進める8020運動の実現には、歯周病の対策が根本です。
 海外赴任前にカリエス治療を義務づける企業も、歯周病の対策までは難しいのが実情です。カリエス治療が歯科医中心で進行するのに対し、歯周病治療は患者主体であるため、海外での健康管理の中でも歯周病対策は重要な位置を占めるといえます。

歯周病の分類、症状

健   常:歯と歯肉の間に1‐2mmの溝が存在します。(歯肉溝)

歯 肉 炎:歯肉の炎症でブラッシング時に出血することがあるが、プラークコントロールを励行することにより回復します。

歯周炎T期:わずかの刺激で出血します。図も知覚過敏となり水がしみやすくなります。歯と歯肉の付着が破壊され歯周ポケットが(2‐3mm)形成されます。また、歯を支える歯槽骨も吸収(骨がとけて減少すること)しますが、治療は短期間で終了します。

歯周炎U期:歯肉は腫脹し歯周ポケットはさらに深くなります(4‐6mm)。この時期になると、排膿が起こり、歯槽骨が1/2程度喪失するため歯がぐらつくようになります。また動揺のため食物が歯に挟まりやすくなります。

歯周炎V期:歯肉の腫脹や歯周ポケットからの排膿は慢性的になりポケットは6mmを超えます。歯の動揺も激しく物も噛めない状態で痛みも生じます。歯槽骨はほとんど消失します。この状態では痛みを除去するため抜歯せざるをえません。

歯周病の原因

 複数の因子が重なりあって引き起こされるカリエスに対し、歯周病は一つの因子の増悪によって引き起こされます。

1歯垢(プラーク)
 歯周病の最大の原因であります。プラークの大部分は細菌であり、近年の研究によって嫌気性菌が歯周ポケットを作ることがわかってきました。

2歯石
歯に付着したプラークは石灰化すると歯石になります。歯石は表面が粗造であるため、細菌が非常に付着しやすく歯周病が進行しやすくなります。

3その他
 不適合な歯の充填物や、口呼吸、不正咬合も歯周病を引き起こします。さらに、糖尿病を初めとした全身疾患によっても歯周病は悪化します。

歯周病の予防

 プラークコントロールが最も重要です。口腔内を清潔に保つことによって原因細菌の繁殖をおさえます。プラークコントロールにはブラッシングが欠くことができませんので、ここに現在推薦されているのを紹介します。

1スクラビング法
 歯の外側は歯ブラシの毛を歯に直角に当て、内側では少し斜めに当てて小刻みに振動させながら磨く方法です。

2補助的手段
 歯ブラシではとれない歯と歯の間は、デンタルフロス(糸ようじ)や歯間ブラシを使ってプラークを取り除きます。

3歯石除去
 スケーリングともいわれ、歯科医院にて専門の機械を有しております。歯科衛生士がいる医院も増えてますので、歯石除去と共にプラークの染めだしをして、ブラッシングの確認が勧められます。歯石除去は半年に1回が目安です。

喫煙と歯周病

 タバコの着色物が歯に付着すると、プラークや歯石を形成しやすくなり、歯周病を誘発させやすくなります。また、審美的にもタバコの着色は清潔感を与えません。

歯周病のチェックポイント

 以下の症状が観察された方は注意が必要です。

●歯間の腫れ
●歯の動揺
●口臭
●食片圧入

まとめ

 歯周病の自覚症状が出てからでは、治療も困難な場合が多いです。体力の低下時に歯周病は悪化し腫脹を伴う激痛が起こります。日常的な健康増進と口腔衛生管理が必要とされております。さらにカリエスに関しても共通のことがいえますが、当人が異常無しと感じていても徐々に悪化していることがよく見られますので、歯科医による定期的(年1‐2回)な検診が望まれます。


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