治療の具体的な目標は、@呼吸機能を正常またはそれに近い状態に維持する、A運動を含む日常生活を支障ないものとする、B気管支喘息の急性増悪を予防する、C連用する薬剤の副作用の発現を防ぐ、ことです。海外出張や旅行は病状がコントロールされた状態ならば全く問題はありません。ただし、平素はきちんと薬剤の内服や吸入を守れていても、時差があると守れなくなりますので、時差に体調を合わせるためには通常よりも内服や吸入回数を多くする必要があります。
治療に経口プレドニンを用いている場合には、たとえ漸減の時期が旅程内にあったとしても、投与量を減量してはいけません。旅程が忙しい場合には、十分な休養をとれずに喘息発作を起こすこともありますので、ゆったりとした旅程とすべきです。航空機内は湿度が10%前後と乾燥しており喘息発作の誘因となりますので、水分摂取に努めてください。車や工場の排気ガスで大気汚染が激しい都市や挨の多い観光地では屋外での活動を制限すべきであるし、またタバコ煙、化粧品や臭い消しスプレー、大気汚染などの気道刺激物質をさけることが喘息発作の予防につながります。
気道感染も喘息発作の誘因となりますので、膿性痰があるときは適切な抗生剤を内服させます。旅先にもピークフローメーターを持参させ、毎日ピークフローを測定させます。ピークフローが自己最善値の80%以下ならば、吸入薬や経口薬剤の量を通常の1.5〜2倍に増量させ、喘息発作を防止させます。現在、喘息発作予防のための第1選択薬は、抗炎症効果の強い吸入ステロイド剤であるプロピオン酸べクロメタゾン(BDP)です。
慢性喘息は継続して何らかの治療を必要とする喘息で、重症度に即した形で、各種薬剤を用い、症状のコントロールをはかります。慢性気道炎症を改善するために中心的役割を果たしているのがBDPで、8パフ(400μg)/日を通常量として用います。全身への副作用は少ないが、時に口腔内の副作用があるため、大容量の吸入補助具(スペーサー)を使用させます。
急性発作が起こった場合には気流閉塞を是正するため、吸入および経ロのβ2刺激薬、エピネフリン皮下注、アミノフィリン製剤およびステロイド剤の点滴静注が用いられます。発作が軽度の場合は、吸入β2刺激薬を定量噴霧器(metered dose inhaler、MDI)で1〜2パフ吸入させ、改善しなければさらに30分後に反復させます。悪化を防ぐため抗炎症剤である吸入ステロイド薬を併用もしくは増量させます(BDP 8〜16パフ、400‐800μg/日)。喘鳴が強く会話時にも呼吸困難があるならば(中等症)、β2刺激薬の定時内服、吸入と高用量のBDP吸入(16〜40パフ、800‐2000μg/日)を行わせます。
非常に喘鳴が強く安静時にも呼吸困難があり、ピークフロー値が60%以下の場合(重症)、経口プレドニン短期大量療法とそれに続く高用量吸入ステロイド薬と経口プレドニン薬を用いさせます。中等症や重症の発作の場合は医療機関を受診させ、症状に応じてエピネフリン皮下注、アミノフィリン点滴静注、ステロイド剤静注へと治療の拡大が必要です。アミノフィリン注射にあたっては、頭痛、悪心、不整脈などに注意します。アミノフィリンやステロイド剤投与が必要な場合には、低O2血症改善のため酸素投与も必要で入院治療へと移ることも多くあります。