「海外赴任と成人病」 成人病を持って海外赴任した場合の健康管理
高脂血症
住友銀行健康管理室医長 石井 賢治
高脂血症とは?

 血液中の脂質の成分には、コレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸などがあります。一般にはこのうちのコレステロールと中性脂肪が、正常以上に上昇した状態を高脂血症といいます。具体的には血清コレステロール220mg/dl以上、中性脂肪150mg/dl以上をそう呼びます。

高脂血症の分類

 コレステロールや中性脂肪はそのままでは水に溶けず、タンパク質と結合したリポタンパクとして血中に存在します。それゆえ、高脂血症と言った時にどのリポタンパクが高いのかが問題となります。一般にはリポタンパクは比重によって分類され、最も軽いものから、@カイロミクロン、A超低比重リポタンパク(VLDL)、B低比重リポタンパク(LDL)、C高比重リポタンパク(HDL)に分類されます。

 さらに一般にはこれらリポタンパクのどの分画が増加しているかによってI〜V型に分類(WHO分類)します。(表1)以下、簡単に解説します。

@I型及びV型高脂血症
 空腹時にもカイロミクロンが血中にみられるもので、これをI型としさらにVLDLの増加が加わったものがV型です。血清中性脂肪は、通常1000mg/dl以上を呈し、臨床的には腹痛発作や急性膵炎の形で発症します。

AII型高脂血症
 LDLの増加による高コレステロール血症を呈します。LDLのみの増加をIIaと呼び、VLDLの増加を伴った場合をIIbと呼びます。臨床的には、動脈硬化が問題となり、特に虚血性心疾患の合併が多くみられます。

HIII型高脂血症
 通常みられないβ-VLDLの増加による特殊なタイ プで、コレステロールと中性脂肪の両方が上がり ます。II型同様、動脈硬化が問題となります。

CIV型高脂血症
 VLDLの増加による中性脂肪が、軽度から中程度 (200〜500mg/dl)上昇したタイプです。LDL程で はありませんが動脈硬化のリスクになります。

表1 高脂血病のWHO分類(phenotype)
増加するリポタンパク血清脂質値
コレステロールトリグリセライド
Iカイロミクロン→〜↑↑↑↑
IIaLDL↑〜↑↑
IIbLDL+VLDL↑〜↑↑
IIIβ-VLDL↑〜↑↑↑〜↑↑
IVVLDL↑〜↑↑
Vカイロミクロン+VLDL↑〜↑↑↑↑↑

高脂血症と動脈硬化

 動脈硬化は、高血圧、糖尿病、喫煙、老化などさまざまなリスクファクターにより引き起こされますが、高脂血症もその重要な因子のひとつです。高脂血症の中で遺伝的な要因から起こる家族性高コレステロール血症は、多くは300mg/dl以上の状態が小児期より続き、遺伝子の一方のみが異常なヘテロ結合体では、男で平均56歳、女で68歳でほとんどが心筋梗塞で亡くなります。ホモ接合体では、通常600mg/dl以上で、ほとんど35歳までに心臓死してしまいます。高脂血症そのものがすぐに生命にかかわるようなことはなくても、その持続は到死的な病態をもたらすと言ってよいでしょう。

 次に高脂血症がどのような機序で動脈硬化を引き起こしてくるかを簡単に述べます。動脈硬化の病理的所見として、動脈の細胞の内へ脂質が多量に蓄積された状態(細胞の泡沫化)が多数認められます。高脂血症、特にLDLが高い濃度にあると変性したLDLも増加し、それをマクロファージが取り込みます。その状態でマクロファージが細胞内に取り込まれますと、通常働くフィードバック機構が働かず、必要以上にLDLが細胞内に蓄積され、泡沫化をすすめます。この際に逆に細胞から脂質を持ち去るのがHDLと言われています。また高脂血症の治療により、蓄積した脂質の減少も認められています。動脈硬化の起こる原因はまだ不明な点も多くはっきりしませんが、高脂血症がそれを進める重要な因子であることは間違いありません。

予防と対策

 遺伝的な要素の強い症例や食事、運動などによってもなかなか効果が表れない場合は、医師の診察を受け、薬物の投与も必要かもしれません。しかし、基本になるのは、内服をしている場合でも、食事や運動であることは間違いありません。ここでは主に食事や日常生活での注意を述べたいと思います。

@摂取エネルギーを控える。
 摂取エネルギーの過剰による肥満は、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪濃度と正比例し、HDLコレステロールと反比例することが判っています。摂取エネルギーを控えるのが最も効果的な高脂血症の治療法と言えます。

A脂肪の量を控え内容を考えて食べる。
 エネルギー摂取量の20〜25%を脂肪から、15〜20%をタンパク質から、55〜60%を糖質から摂取するのが理想的と言われています。また、植物性油脂や新鮮な魚の油には、不飽和脂肪酸が多く含まれ、血中コレステロールを低下させます。逆に、動物性脂肪は飽和脂肪酸が多く、血中コレステロールを上昇させます。また、最近は魚介類に多く含まれる、エイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸といった多価不飽和脂肪酸の血栓を予防する作用などが注目されています。

Bコレステロールを多く含む食品を控える。
 一日のコレステロール摂取量を300mg以下に抑えることを目安とするとよいでしょう。図1を参考にして下さい。卵黄、レバー、獣肉、たらこ、すじこ、いか、えびなどは特に多く含んでいる食品です。

図1 食品中のコレステロール含有量

C食物繊維を多く摂る。
 食物繊維はコレステロールの吸収を抑制します。穀物、豆類、いも類、野菜、きのこ、海藻などを多く摂りましよう。

Dアルコールや嗜好品を控えましょう。
 アルコールや清涼飲料水はついつい飲み過ぎてしまいます。お菓子なども大変カロリーが高く、中性脂肪を上昇させます。タバコもLDLコレステロールを上昇させ、HDLコレステロールを低下させるようです。

E運動でストレス解消をしましょう。
 積極的に運動して消費エネルギーを多くし、同時にストレスも解消させましょう。できれば毎日できる無理のない運動をおすすめします。


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