不整脈が起きると不安なものですが、放っておけば命にかかわる不整脈や、不快な自覚症状のせいで日常生活に支障を来すような不整脈以外は、不整脈を抑える薬(抗不整脈薬)を安易に服用するのは好ましくありません。薬が却って不整脈を誘発したり、他の薬と併用すると不整脈が生じやすくなることもあるからです。
健康保険で使える抗不整脈薬には多くの種類がありますが、メキシレチンという薬以外のすべての抗不整脈薬の使用説明書には、「他の薬が無効の場合」のみ使用することという注意書きが記されています。抗不整脈薬で命が延びるという確証はなく、この種の薬は専門医でも使いにくい薬なのです。
従って例えば前述した発作性心房細動では、抗不整脈薬は副作用が多い割に効果が不確実なので、胸壁に当てた電極から瞬間的に高圧電流を流して脈を普通に戻す直流通電(DCショック)という方法が広く用いられています。長期間、時には生涯続く慢性心房細動では、左心房がブルブル震えて血流が滞るためその中に血の塊が生じやすく、時にはこの破片が血流に乗って脳の細い動脈を塞ぎ、脳卒中を起こします。これを薬で予防しさえすれば、不整脈自体は命に関わるほどではないので、抗不整脈薬はやはりあまり使われません。
WPW症候群や心房リエントリー症候群があって、脈拍を生じる刺激が心臓の中をぐるぐる回るために頻脈性の不整脈発作が頻繁に起きる場合は、メイズ手術やカテーテル焼灼術などの外科的治療が行われることがあります。また逆に脈拍を起こす刺激が滞って脈拍数が極端に減り、このため脳への血流が乏しくなって目まいや失神発作を起こすような徐脈性不整脈(完全房室ブロックや洞機能不全症候群など)では、人工的に電気的刺激を心臓に伝えるペースメーカーを胸の皮下に埋め込む手術も行われます。
現在、国内で20万人以上の人がペースメーカーを装着し、毎年ほぼ2万5千人ずつ増えています。最近は小型化が進み、最新のものは本体が500円玉ぐらいの大きさで、中にコンピューター機能を備えた電子回路やリチウム電池が収められています。電池の寿命は5〜10年です。手術は約2時間で終わります。
人の動きに合わせて脈拍数を変えることができるなど、性能や安全性も高く、日常生活の制限もほとんどありません。出産する人や、ジョギング・水泳を楽しむ人もいます。定期的なチェックが可能な病院を利用できるなら、海外赴任も可能です。
日常生活上の注意
「心臓病」の項で述べた注意が、不整脈にもそっくり当てはまります。喫煙や過度の飲酒・コーヒーなどのカフェイン飲料の飲みすぎ・精神的なストレス・過労・睡眠不足などは不整脈を誘発することがあります。飛行機で洋の東西をひと飛びして生じる時差呆けも、自律神経のバランスを崩して不整脈を起こすことがあります。基礎疾患のない不整脈はあまり恐れる必要はありませんが、海外勤務には不整脈を起こしやすい要因が付きまとうので、不整脈のある人やそれを起こしやすい人の赴任の可否については専門医に判断を求めることが大切です。