心臓病や心臓病を起こしやすい高血圧症などがあったり、以前に狭心症や心筋梗塞を起こしたことのある人では赴任先での勤務を含めた生活状況や医療環境を考慮して、赴任の可否を決めなければなりません。医師が赴任可能だと判断し、本人も赴任を望む場合は、医師から充分指導を受け、注意を守ることが大切です。前述したように、自覚症状は病状がかなり進むまでは現れないことが多いので、自覚症状がないからといってタカを括ることは禁物です。
海外でも服薬を続ける必要があれば、健康保険では4週間分までの一括投薬を受けることができます。狭心症の薬など、薬によっては日持ちしないものもありますので医師に確かめてください。長期服薬が必要な場合は、現地の信頼できる医師に治療を委ねるのが原則です。一般的にはまず家庭医を選びます。
そして必要に応じ、その医師に心臓専門医を紹介してもらうことになります。渡航前に日本の医師に、現地医師に宛てた紹介状を作ってもらうことも必要でしょう。
日本の医師から薬を送ってもらう人もいますが、病状や身体の調子は必ずしも一定ではなく、治療内容もそれに応じて変えなければならないことが多いので、医療も郷に入れば郷に従う「現地化」を心がけるべきだと思います。途上国や医療過疎地で適当な医師や医療機関を利用できない場合は、当然ながらその地への赴任は避けなければなりません。
現地で病状が突然悪くなる場合に備えて、救急車の手配や救急病院の利用の仕方、緊急連絡方法などは十分飲み込んでおく必要があります。心臓発作で倒れた人を現場で助ける心肺蘇生術も、赴任者全員が予め講習会などで習っておくことをお勧めしたいと思います。
虚血性心臓病の危険因子
心臓病の中で最も多い虚血性心臓病は、血圧やコレステロール値が高いほど、糖尿病や肥満があるほど、たばこを吸えば吸うほど、そしてストレスが多いほど起きやすく悪くなりやすいことが分かっています。
高血圧症では、心臓は高い血圧を維持するために仕事量が増えてオーバーワークになりがちです。体が太っていても心臓に負担がかかります。コレステロールが多いと、その中のLDL-コレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)が血管壁に滲み込んで、動脈硬化が進みます。タバコを吸うと血液中に吸収されたニコチンが血管の内面を傷つけ、その傷口からLDL-コレステロールが血管壁に侵入しやすくなります。糖尿病では過剰の糖が血管を痛め、コレステロール値も高いことが多いので、動脈硬化が一層進みます。過度のストレスは交感神経を興奮させ、アドレナリンなどの分泌を促して血管が収縮し、血圧を高めます。そして心臓の仕事量が増え、動脈硬化が進んで心臓病が起きやすくなるのです。
心臓病を防ぐ
海外派遣労働者は国内勤務の時よりも一段と責任の重い職務に就くことが多いうえ、日本の本社との時差を超えた業務連絡、書類の翻訳、言葉や考え方が異なる現地人との折衝、日本からの釆訪者のアテンド(接遇)など、海外ならではの仕事も加わります。ストレスが多く、生活は不規則になりがちです。
宴席の機会が増え、タバコの量も増えるという具合に、心臓病のリスクが高まる場合が多いことに注意する必要があります。従って次のような日常生活上の注意が大切です。
1)食べすぎす、腹八分。塩分は控えめに、緑黄色野菜や海草類は多く摂るよう心がける。
2)アルコール飲料は適量にとどめる。例えばビールを日に小ビン2本、ウイスキーならダブル1杯。
3)タバコは吸わない。日に15本以上吸う人は吸わない人に比べて心筋梗塞にかかる率は約3倍、死亡率は6〜7倍にも上がります。
4)適度の運動をする。運動による消費カロリーは少なくとも週2,000kcal以上(表参照)。治安が悪く散歩などできないところでは、屋内でできるダンベル体操やエアロビクスでも結構です。