ニュースレター(機関紙)
なるほど栄養学〜肝機能障害〜
NL04110104
食生活、栄養、肝臓
/
/
/
/
/
/
/
/
/
/
| 肝機能障害 食生活アドバイザー 来栖文子 年末年始は飲食の機会が多く、肝臓の具合も気がかりですね。 ■肝臓の主な病気 肝臓は、腸管から吸収された栄養素の転化・合成・貯蔵・解毒・排泄などを行う大切な臓器です。正常に機能しなくなると、日常生活が困難になり、命に関わることも少なくありません。肝臓の病気としては、次のものが代表的です。 ◎脂肪肝 食べ過ぎ・飲み過ぎ・運動不足等の生活が続くと、肝臓に多量の脂肪が蓄積されて、その機能が低下します。そのような状態の肝臓を「脂肪肝」といいます(詳しくは後述)。 ◎肝炎 ウィルス、アルコール、毒物などが原因となり、肝臓に炎症が生じたものです。肝炎のおよそ8割はウィルスによるもの(A、B、C、D、E、Gの6つのタイプがあり、なかでも肝硬変や肝臓ガンなどの重度の疾病へ移行する危険性が高いのがB型とC型)で、一般的には「肝炎」といえばウィルス肝炎を指します。食べ過ぎ・飲み過ぎ・運動不足等による「肝脂肪」から移行するケースも少なくありません。 ○アルコール性肝炎 アルコールは肝臓で分解されますが、何らかの原因で分解されなかったアルコールが肝細胞を破壊し、炎症が引き起こします。これを「アルコール性肝炎」といいます。 ◎肝硬変 肝臓はとても再生力の強い臓器で、通常は細胞が破壊されてもすぐに再生されます。しかし、「肝脂肪」や「肝炎」などで破壊される細胞が多くなると再生が間に合わなくなってきます。そのままだと「隙間」ができてしまい、肝臓崩壊の危機になります。そこで「星細胞」が線維を作り崩壊を防ぎます。この線維がたくさんできて肝臓が硬化し、肝臓の機能が著しく低下してましった状態が「肝硬変」です。 ◎肝臓ガン 肝脂肪や肝炎、肝硬変などの症状が重くなると、肝臓内に活性酸素が大量に発生して肝細胞のDNAを傷つけ、「肝臓ガン」を発症することになります。 これらの病気は、「脂肪肝」→「肝炎」→「肝硬変」→「肝臓ガン」と連鎖的に進行してしまうことが多いこともわかってきました。 ■始まりは脂肪肝 私たちが食べたものは、胃や腸で消化・吸収され、肝臓へと運び込まれます。肝臓は蛋白質、糖質、脂質などの栄養素をさらに体の役に立つような形に作り換えて、全身へと送り出されます。糖質や脂質等は、個々の肝細胞で中性脂肪に合成作り換えられて、送り出されていきます。余った分は、脂肪の形に変えて蓄えられ、運動などで体のエネルギーが不足した時に、再び利用されます。 暴飲暴食などが続くと、肝臓が働き過ぎの状態になり、栄養素を上手に処理することができなくなってしまいます。この「合成される中性脂肪」と「送り出される中性脂肪」のバランスが崩れ、個々の肝細胞中に中性脂肪がどんどん貯まってしまい、肝臓の機能もどんどんと低下していきます。この状態を「脂肪肝」といいます。 よく「フォアグラ(鴨やガチョウに無理矢理大量の餌を食べさせ肥大させた鴨やガチョウの肝臓)」にたとえられますので、聞いた覚えがあるという方も多いことと思います。 胃や腸などでの異常は痛みとして現れるので自覚できるのですが、肝臓での異常はそうとう悪くなるまで体調不良や痛みなどの自覚症状となって現れません。肝臓の半分が脂肪で覆われてしまっても、ほとんど自覚症状がないのが脂肪肝です。前述のように、「脂肪肝」から「肝炎」「肝硬変」「肝臓ガン」と連鎖的に進行してしまうことも少なくありません。脂肪肝の人を追跡調査した結果、動脈硬化による心筋梗塞や糖尿病など、死に至る病を起こす確率は、正常の人に比べてなんと2倍近い値を示したという研究発表もあります。普段からの気配りが大切です。 ■脂肪肝の主な原因 @食べ過ぎや高カロリー食品の摂り過ぎ 食べ過ぎや、脂っこい物や糖分の多いお菓子・ジュース、果物などの高カロリーの食品の摂り過ぎは、「合成される中性脂肪」を増やし、脂肪肝の原因となります。ビタミン剤やドリンク剤などの栄養補給剤も、飲みやすくする為の糖分が多量に含まれていることが多いので、ご注意下さい。 Aアルコールの過剰摂取 お酒の飲み過ぎも「合成される中性脂肪」を増やし、脂肪肝の原因となります。アルコール性肝炎の原因にもなります。 B運動不足 「送り出される中性脂肪」が少なく、脂肪肝の原因となります。 C間違った(栄養の偏った)ダイエット 「野菜サラダとフルーツだけを摂取してダイエット」などで、脂肪肝となる人も少なくありません。ダイエットをすると血液中の脂肪が減るので、皮下脂肪などから使われなかった脂肪が肝臓に集められて、中性脂肪に合成されます。そして中性脂肪を血液中へ送りだすわけですが、その際には蛋白質で包んでやらないと送り出せないのです。ダイエットにより蛋白質を多く含む肉や魚を摂取していませんので、蛋白質が不足し、結局、中性脂肪は出て行くことができずに肝臓に貯まってしまいます。一見成功したように見えるダイエットも、実はお腹から肝臓へと脂肪を移したにすぎなかったということです。ダイエットする場合にも、肉や魚、豆腐や納豆などの蛋白質源をしっかり摂る、バランスの良い食事が大切なのです。 ■脂肪肝から肝炎、肝硬変、肝臓ガンへ 肝臓に脂肪が蓄積されると、肝細胞の核を包み込むように存在している「ミトコンドリア」という器官で異変が起こることがわかってきました。ミトコンドリアは、「中性脂肪を燃やして、細胞が生きていくエネルギーを取り出す」というとても大切な役目を担っています。ミトコンドリアは、全身の細胞に存在しますが、とりわけ肝臓や胃・腸の周りにはよりたくさん存在しています。脂肪が溜まるか否かはこのミトコンドリアの働き次第ともいえます。 脂肪が溜まってくると、ミトコンドリアは中性脂肪を減らそうとして必死に中性脂肪を燃やし始めます。すると、無理に燃やすために大量の「活性酸素」が発生してしまうのです。活性酸素はミトコンドリアを傷つけます。また、活性酸素は中性脂肪を「過酸化脂質」に変えてしまいますが、この過酸化脂質もミトコンドリアを傷つけます。ミトコンドリアは次々と壊されて肝臓に炎症が起こり始め、「肝炎」になってしまうのです。 肝炎が続くと、肝硬変になってしまいます。また、大量に発生した活性酸素は肝細胞のDNAを傷つけて「肝臓ガン」を発症させてしまうことにもなります。 ■肝機能障害を予防するには @バランスのよい食事を心がける 偏食を避け、多種の食品を少量ずつ万遍なく摂取するように心がけて下さい。 A酒を飲み過ぎない B脂質の多い食べ物は控える 揚げ物や脂っこい物、ドレッシングやマヨネーズ、ベーコン、生クリーム、クッキーやチョコレート・スナック菓子などは、脂肪分(脂質)の多い食品で、肝臓の負担を大きくします。控えるようにして下さい。 C適正体重を維持する 肥満は肝臓に負担をかけます。適正体重範囲内に保つように心がけて下さい。 B睡眠は量より質を 熟睡は内蔵の疲れを取ります。 E入浴は肝臓の活性化に最適 入浴は、肝臓の血流を高めて新陳代謝を活発にし、肝臓に溜まった脂肪を徐々に減らしてくれます。気分もすっきりとし、肝臓の負担を軽減してくれます。飲んだ直後の入浴は、アルコールの分解過程でできる有害物質アセトアルデヒドが心臓の鼓動を早めるので危険です。飲んだ日は早く寝て、翌朝早起きして朝風呂に入りましょう。 ◎アルコールの上手な飲み方 @飲み過ぎない ○日本酒なら1合 ○ビールなら大びん1本 ○ウイスキーなら水割り2杯 程度までが一日の目安量とされています。アルコール度の高いものは、食道や胃の粘膜を傷めます。少なくとも週2日は飲まない日とし肝臓を休ませて下さい。 AビタミンB・C・カロチンを十分に アルコ−ルは、体内で燃焼する際に、ビタミンB群のナイアシンというビタミンを大量に消費します。また過剰なカロリー源となったアルコールは、肝臓で脂肪に変らえれて貯蔵されますが、この過程で大量のビタミンB1が消費されます。ビタミンB群の欠乏は、精神を不安定にし、イライラや倦怠感をまねきます。脚気の原因にもなります。酒好きの人は、ビタミンB群を十分に補給するようにして下さい。 B蛋白質を適度に摂る 蛋白質が、胃壁に膜をつくりアルコ−ルの直撃から守ってくれます。また、胃に食べ物があると、アルコールの吸収を遅らせ、肝臓が余裕をもって働けるようになります。蛋白質は、ナイアシンの材料にもなります。蛋白質源は胃壁を守る程度で十分です。ビタミンを多く含み、低蛋白・低脂肪が特徴の野菜類も食べるようにして下さい。 C食べながらゆっくり飲む Dご飯を食べる お酒を飲むとご飯を食べない人が多いようです。ご飯などの主食に多く含まれる炭水化物は最も好ましいエネルギー源です。炭水化物をきちんと摂らないと、脂質・蛋白質からエネルギーをまかなうことになりますが、その際には種々のビタミンが多量に消費され、ビタミンの欠乏をまねくことになります。 Eアルコール度の高いものを避ける アルコール度が高いと、食道や胃の粘膜を傷めます。 Fチャンポンをしない チャンポンをすると、異種のアルコールが混在し、その分解が円滑に進まなくなり、胃や肝臓に負担をかけます。有害物質アセトアルデヒドの量も増え、悪酔いを増長することになります。 ■肝臓に良い成分・食品・料理 肝臓に負担をかけないためには、低カロリー、高タンパクに留意し、バランスの良い食事を心がけること、運動で脂肪を燃やすことなどが大切です。 ◎良質の蛋白質 肝臓は人間の臓器の中で最も再生力が強く、半分切除しても残りが健康な状態ならば1ヶ月程度で元通りに戻ってしまう臓器です。臓器の主成分は蛋白質なので良質な蛋白質が肝臓に優しい食品といえます。中でも体内で合成できない必須アミノ酸を豊富に含む食品がお薦めです。必須アミノ酸を多く含む蛋白質は、傷んだ細胞を癒すことができます。 良質な蛋白質は、脂身の少ない肉や魚、乳製品などに含まれています。穀類や野菜などと共に効率良く摂る為には、毎日の食事に豆腐半丁または納豆1パックを追加すると良いでしょう。 ◎レバー レバーは蛋白質を豊富に含み、さらに各種ミネラルやビタミンB群を効果的に摂ることができる理想的な強肝食といわれています。 ◎緑茶(カテキン) 肝臓には、大量のミトコンドリアが存在しています。これらが活発に働けば、溜まっている脂肪を効率良く減らすことができます。緑茶に含まれる「カテキン」は、ミトコンドリアの処理能力を飛躍的に活性化(およそ96%アップ)させます。 ◎青魚(EPA・DHA) イワシ・サバ・ブリ・トロなどの青魚に多く含まれる「EPA」や「DHA」も、ミトコンドリアを飛躍的に活性化(およそ45%アップ)させます。 ◎ゴマ(ゴマリグナン) ゴマに含まれる抗酸化物質「ゴマリグナン」は肝機能を向上させてくれます。毎食小さじ1杯(5g)程度のゴマを摂取して下さい。 ◎サツマイモ(アントシアニン) アヤムラサキという品種のさつまいもに含まれている紫色の色素「アントシアニン」は、抗酸化物質ポリフェノールの一種で、肝機能を向上させてくれます。赤ワインのポリフェノールもアントシアニンですので、1日にグラス1杯程度はお薦めです。飲み過ぎないようにご注意下さい。 ◎ウコン(クルクミン) 過剰なアルコールの摂取によって発生してしまったアセトアルデヒドを素早く分解して、水に変化させます。つまりウコンはアセトアルデヒドを分解することで、肝細胞の外に脂肪を運び出す肝臓の働きを助けてくれます。また、ウコンの黄色い色素成分クルクミンは脂肪の分解を行う胆汁の分泌を促進します。ウコンの中でも脂肪肝には秋ウコンが最適です。 ◎強肝作用のある食品・料理 次に示すような食品・料理は、肝臓を強く丈夫にします。 ○ホウレン草や小松菜などの卵とじ ○ホウレン草や小松菜などのゴマ和え ○シジミ・アサリ・里芋などの味噌汁 ○豆腐 ○納豆(青ノリ、焼きノリ、海藻、オクラ入りなどがよりお薦め) ○ソバ(ネギ・ノリ入り) ○魚+大豆製品(魚のけんちん蒸し等) ○肉料理(キノコ入り) ○ニラ+レバー 等があげられます。 なお、二日酔い・悪酔いに効果的な食べ物として、果物・梅干し・シジミの味噌汁等があげられます。 ■肝機能患者は鉄分を控える 最近の研究で、従来、肝臓に良い食品とされてきた「シジミ」、「ハマグリ」、「レバー」、「アーモンド」などが、肝臓を患っている人には悪く作用してしまうことが判明しました(これらは健康な人には「肝臓に良い」お薦めの食品です)。 もともと肝臓は、血液の材料として鉄分を蓄えていますが、肝脂肪や肝炎になると鉄分が異常に多くなります。鉄分が多くなると、活性酸素が大量に発生してその症状をさらに悪化させてしまうことになるとのことです。 ◎鉄分の多い食品(既に肝臓の悪い人には控えてほしい食品) 魚介類、豆、肉類は、鉄分が高いものが多くあります。魚も血合いの部分は鉄分が多く含まれています。肝臓のためにと上記の食品を積極的に食べるのは、病気の方には逆効果になります。 アサリ シジミ ハマグリ 豚レバー 鶏レバー 卵 メザシ 納豆 大豆 ホウレン草 アーモンドなど 鉄分を避ける必要があるのは、すでに肝機能が悪化してしまっている人です。鉄分は、貧血予防などの意味からも人体には必要な成分で、健康な人がこれらの食品を積極的に摂ることはお薦めです。 となると、「既に肝臓が悪いか否か」ということが、重要なポイントになってきますが、健康診断の血液検査ではそのことを判定できません。「コレステロールや中性脂肪が高い」といっても必ずしも脂肪肝とは限らないし、すでに「脂肪肝」になっていても血液検査では正常と出ることも少なくないのです。 脂肪肝の検査には、超音波検査(エコー)を行うしかないのです。食べ過ぎ気味の人、飲み過ぎ気味の人、脂っこいもの・高カロリーなものが好きな人、お菓子やジュース類の好きな人、ダイエットに励んでいる人などは、定期的にお近くの病院で検査してもらうようにして下さい。 肝機能障害の治療では鉄分を減らすために血を抜いたりするそうです。鉄分を控えるとなると、食べられる食品もかなり限られてしまい、かなり辛いことと思います。そのような事態にならないためにも肝臓への気配りをお忘れ無く。 |